南の島に帰ってから、
ひと月が経ちました。
アーサーは
朝の配達を終え、
郵便局に帰ってくると、
ぼんやりと
窓の外を眺めていました。
目の前を
たくさんの魚たちが、
黒潮に乗って、
南の海へ
泳いでいきます。
そこには、
なつかしい、
生まれ故郷の
小島があるのです。
いまごろ、
オヤジとおふくろは
どうしているだろう?
もしかしたら、
故郷では、
大変な騒ぎになっているかもしれない。
『王さま、
ぼっちゃまは、
王様になりたくない、
と言っております』
『なに?
アーサーが
王様になりたくないと?』
『さようでございます』
『そんなバカなことがあるものか。
アルフレッド、
連れ戻せ!
百万の兵をもってしても、
連れ戻すのじゃ』
『はっはー。
かしこまりました』
アルフレッドが
オヤジの前に
ひれ伏す光景を思い浮かべて、
アーサーは、
大きなため息を吐きました。
「どうしたのかね?
アーサー。
元気がないじゃないか」
局長のツボタさんが
背中越しに
言いました。
「そうだよ、
アーサー。
最近、どうかしてるよ。
窓の外を
黙って眺めているなんて
君らしくないなあ」
タカアシガニのタカアシさんが、
たくさんの郵便を載せた
棚の前で言いました。
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